頭蓋オステオパシーについて

 

オステオパシーと他の手技療法とを隔てる大きな特徴の一つに、頭

 

蓋オステオパシーがあります。

 

つまりオステオパシーでは、一般的な整体などでは触れられること

 

のない頭蓋領域に対する施術も行なうということです。

 

一般的には頭蓋骨や顔の形は変わらないと思われていますが、実際

 

には生きている人の骨というのは、弾力性があり特に頭蓋骨のよう

 

な薄い骨は、頭蓋骨表面につながる多くの筋肉の引っ張り、あるい

 

は表面の膜の異常などの要因で歪んでしまいます。

 

そういった歪みが起きると、例えば顔の形の非対称だけでなく、斜

 

視、顎関節症、顔面神経麻痺他さまざまな症状が現れる原因となり

 

ます。

 

また子供の多動症(ADHD)や自閉症、学習障害なども頭部の筋

 

膜、腱膜、縫合など膜の緊張が影響していると考えられています。

 

実際にアメリカのオステオパスであるベリル・アーバックルは幼児

 

の病理解剖を数百回行い、頭部の膜の状態が予想以上に深刻な機能

 

障害の原因となっていたことを認めています。

 

また現在、90歳を過ぎて現役で小児専門の頭蓋治療を行なってい

 

るアメリカのビオラ・フライマンDOのところには、世界中から

 

様々な問題を抱えた子供達が訪れ、大きな成果をあげています。

 

 (ヴィオラM. Frymann、DO、FAAO、女史は2016年1月2

 

3日に永眠されました。享年94歳)

 

私も施術の際には、必ず頭蓋の状態をチェックして調整をおこない

 

ます。

 

頭部の症状として一番多いのは、やはり頭痛です。

 

当院に頭痛の症状で来られる方の多くは、以前に病院に行きMR

 

I、CTなどの画像検査をおこなった経験があります。

 

しかし病院では、頭部の画像による診断で「特に異常なし」と言わ

 

れ、鎮痛薬を出されるだけで、結局その後も辛い症状を抱えたまま

 

生活しているというケースが大半です。

 

実際のところ脳自体には知覚神経が存在しないため、たとえ指で押

 

しても痛みは感じませんし、脳を包んでいる硬膜には知覚受容器が

 

存在しますが、くも膜下、硬膜下や硬膜外の出血他なんらかの物理

 

な圧迫がなければ、痛みは感じません。

 

結局、ほとんどの頭痛の原因は頭蓋骨表面の、筋肉、筋膜、腱膜、

 

骨膜、頭蓋骨を繋いでいる縫合の問題、さらにそれらによる頭蓋骨

 

のゆがみや緊張、それに伴う頭部の血液、リンパの循環不全という

 

とになり、そういった問題を取り除いてあげれば、頭痛も解消す

 

ということです。

 

以下にオステオパシーの頭蓋施術で効果があると言われているもの

 

を挙げます。

 

 

   ・頭痛

 ・自律神経失調

 ・顎関節症

 ・慢性疲労症候群

 ・花粉症

 ・鼻炎

 ・中耳炎

 ・不眠症

 ・めまい

 ・メニエール病

 ・頭や顔の歪み

 ・統合失調症

 ・うつ病

 ・摂食障害

 ・パニック障害

 ・てんかん

 ・不安神経症

 ・適応障害

 ・自閉症

 ・発達障害

 ・アスペルガー症候群

 ・多動症

 ・チック

 ・斜視

 ・言語の遅れ  など

 

 

頭痛、花粉症、鼻炎などは私の経験では比較的早く改善が見られま

 

すが(ときには1回の施術で症状が消えます)それら以外に関して

 

は、改善までの期間は個人差が大きいのではないかと考えていま

 

す。

 

また当院には過去に小顔エステ後から体調不良となった方が、来院

 

されたこともあります。

 

1回の施術で改善した方もいますが、症状が無くなるまでに10回

 

以上の施術が必要な方もいました。  

 

小顔エステを受けたことのある方たちの話によると、小顔エステと

 

いうところは力任せに顔を圧迫するところが多く、かなり痛い思い

 

をするケースも多々あるようですが、痛い思いをさせるほどの力で

 

頭蓋の矯正をおこなうことは危険ですし、頭蓋領域の解剖学を理解

 

していない施術者がおこなうと、逆に問題を起こしてしまう可能性

 

が高いと思います。 

 

解剖学の知識に乏しい施術者がおこなう小顔矯正が、どれほど危険

 

なものかを、女性の皆さんは是非理解していただきたいと思いま

 

す。

 

 

 

 

 

補足:

 

頭蓋オステオパシーについて調べた経験がある方は、私が書いてい

 

る内容が他のオステオパスが書いていることとは違う、と感じるか

 

もしれません。

 

現在、日本で「私は頭蓋領域のオステオパシー施術をします。」と

 

いう術者のほとんどは、サザーランド系、あるいはアプレジャーの

 

頭蓋仙骨療法(CST:クラニオセイクラルセラピー)などの非常に

 

軽いタッチで施術する方法を用いています。

 

これは脳脊髄液の波動を感じ取りながら、頭蓋表面にごく軽く触れ

 

る程度の圧で脳脊髄液の波動による頭蓋の膨張、収縮の動き(オス

 

テオパシーでは蝶形骨と後頭骨間の動きから屈曲、伸展と表現しま

 

す。)を正常化させることにより、脳脊髄液の流れを良くして自然

 

治癒力を高め、身体に良い方向の変化が現れることを期待する、と

 

いうような考え方です。

 

私が学校で習ったのもこの方法ですが、いわゆるバタフライタッチ

 

(5グラム程度の圧)と言われるこの方法では、残念ながら私には

 

頭蓋領域の問題を取り除くことが出来ませんでした。

 

また私自身も何人ものオステオパスに、この方法で施術してもらい

 

ましたが、いくら

 

「はい、これで頭蓋の屈曲、伸展の動きが正常になりました。」

 

と言われても、なんらかの良い変化を感じることが全くありません

 

でした。

 

そこで、この方法はあきらめ、私はロバート・フルフォードDOが

 

おこなっていたように、筋、膜、縫合などの組織ベースで頭部の状

 

態を調べ、それらの組織の問題を取り除いていくという方法に変え

 

ていきました。

 

その結果、それまでとは比べものにならないくらいに、受けた人達

 

の症状の改善が見られたために、現在は脳脊髄液の波動を使って頭

 

蓋の動きを正常化するのではなく、身体の他の部分と同様に触診に

 

より組織の問題箇所を見つけ、その部分を手技により正常な状態に

 

戻していくという方法で、頭蓋調整をおこなっています。

 

私の経験では、軽いタッチの頭蓋施術は一時的に頭蓋の動きが正常

 

化しても、少し経つと元に戻ってしまい、正常な状態を維持できま

 

せん。

 

マッサージを受けた時に一時的に身体が楽になって、少し経つと元

 

に戻るのと同じようなイメージと考えれば分かりやすいかもしれま

 

せん。

 

現在、一般的に知られているオステオパシーのテクニックの中で

 

は、ストレイン・カウンターストレイン(SCS)の頭蓋施術が、最

 

も効果的な方法ではないかと私は考えていますが、残念ながら現在

 

の日本でSCSの頭蓋施術をきちんと行うことが出来るオステオパス

 

は、数える程しかいないのではないかと思います。

 

SCSによる頭蓋施術や、私がおこなっている方法のようにある程度

 

しっかりとした力を頭蓋にかけると、軽く触れる程度の圧では解ら

 

ない頭蓋内部にある縫合の固着などの問題まで、はっきりと感じ取

 

ることができます。

 

ですから、ある程度しっかりした圧により頭蓋の調整をおこなうこ

 

とで、結果的に脳脊髄液の流れも正常化させることが可能です(ち

 

またで行われている小顔矯正のような、痛みが出るほどの圧ではあ

 

りません。)

 

他の施術院では、頭蓋オステオパシーというと、本当にほとんど頭

 

部しか触らないところも多いようですが、私は身体の他の部位との

 

関係を抜きにした頭蓋調整はありえないと思っていますので、あく

 

までも身体全体の施術の一部として、おこなっています。

 

また一部のオステオパスは、頭蓋オステオパシーを何か神秘的で特

 

殊な技能のように書いていますが、私に言わせると頭蓋調整はなん

 

ら特別なものではなく、きちんとした解剖学、生理学の知識と触診

 

の能力があれば、誰もが身につけることが出来るものです。

 

 

では最後にウイリアム・G・サザーランドが1947年におこなっ

 

た講座で受講者達が、サザーランドにもっと頭蓋の治療法につい

 

て、講義をして欲しいと要望したときの言葉です。

 

彼は激怒しながら、こう言いました。

 

 

 

「これは『オステオパシー』であり、それ以外の何ものでもない。

 

首を切って、頭を投げ捨ててしまうこの業界の他の人達と同じよう

 

に、首を切って、体を投げ捨ててしまう君たちも最低だ!」

 

 

 

 

身体全体を見ずして、真のオステオパシーはあり得ません。