HVLA(スラスト)の原理(一般説)(2011/10/20)

 

今回から、オステオパシーの代表的なテクニックのいくつかについて、

一般的に世界中のオステオパシーの学校で教えられている原理と、

それに対して、私が自分なりに考えた原理を書きたいと思います。

まず今回は、HVLA(High Velosity Low Ampuritudo-高速低振幅)

テクニック、別の名称としてはスラスト、あるいはドッグテクニックと

呼ばれるものです。

このテクニックはもともとはオステオパシーのテクニックですが、現在は

カイロプラクティックや整体と呼ばれるものでもよく使われる、いわゆる

関節をバキバキするテクニックです。

きちんと関節の可動域がわかっている施術者が行えば、特に問題はないの

ですが、中途半端にやり方だけを学んだ人達がこのテクニックを使用して

今までにも、数多くの問題が起きてきたようです。

ちなみにオステオパシーの業界では、私が知る限りこのテクニックで大きな

障害を起こしてしまったという話は聞いたことがありません。

まず、一般的に言われているHVLAの原理をクチェラ・マニュアルを

参考にして、書きたいと思います。

 

 


 

 

図が小さくて、解りにくいかもしれませんが結論から言うと筋肉にある

固有受容器による反射を利用していることになっています。

以前「筋肉と腱」の回に筋肉の構造を書きましたが、筋肉にある固有受容器

には筋紡錘内にある、らせん終末(Ia線維)、散形終末(Ⅱ線維)、

そして腱の部分にあるゴルジ腱器官(Ib線維)の3種類がありますが

これらの反射により、筋肉の異常緊張を取り除くということになっています。

かなり図が小さくて申し訳ありませんが、図の中に例1、例2と書いてある

2つの反射弓が載っています。

例1がゴルジ腱器官の反射弓、例2が筋紡錘の反射弓です。

ではそれぞれの説明をクチェラ・マニュアルから抜粋したいと思います。



例1  ゴルジ腱器官

硬くなった筋の錘外線維の伸張はゴルジ腱器官を引っ張り、反射的にその

筋の収縮を抑制する。

ゴルジ腱器官はスプリンギング、揉捏、伸張するためのしっかりとした押圧

、または素早い直接的手技であるスラストによって刺激される。


例2  筋紡錘

体性機能障害の治療に用いるスラストは、方向を定めた高速だが低振幅

(1/8~1/4インチ=3~6mm)の活性化力である。

スラストの理論的裏付けは次の通りである。

収縮した筋を強制的に伸張(または維持された抵抗に反して伸張)すると

筋紡錘からCNS(中枢神経系)に連続的に求心性インパルスが発射される

ため、CNSはγ(ガンマ)運動ニューロンに抑制インパルスを送り出して

筋紡錘へのγ活動を弱めるので、その体性筋は弛緩する。

これが中枢抑制反射である。



では次にこの論理の問題点を挙げたいと思います。


  1、以前にも書きましたが、スラストは筋肉だけでなく靭帯などの

    結合組織にも使われます。結合組織中には筋紡錘やゴルジ腱器官

    が無いため、上記の反射弓の理論ではなぜ結合組織が柔らかく

    なるのか説明できません。

  2、ゴルジ腱器官の抑制反射は、確かに起こり一時的には筋肉が

    弛緩します。

    しかし、私が自分の側頭筋の中で部分的に異常緊張を起こして

    いる線維を使い、ゴルジ腱器官のIb抑制が起こってから

    どのくらいの時間で元の緊張状態に戻るかを測ったところ、

    わずか数10秒でした。

    この程度の時間では、一時的に筋は弛緩してその部分の血流は

    改善されるものの、問題を取り除けるようなものではなさそう

    です。



これらのことから、私はスラストは固有受容器の反射弓を利用してSD

(体性機能障害)を取り除いているのでは無い、という結論に達しました。

では、なぜスラストでSDが取り除けるかの私なりの考えを、次回は

書きたいと思います。