HVLA(スラスト)の原理(一般説)

 

今回から、オステオパシーの代表的なテクニックのいくつかについて、

一般的に世界中のオステオパシーの学校で教えられている原理と、

それに対して、私が自分なりに考えた原理を書きたいと思います。

まず今回は、HVLA(High Velosity Low Ampuritudo-高速低振幅)

テクニック、別の名称としてはスラスト、あるいはドッグテクニックと

呼ばれるものです。

このテクニックはもともとはオステオパシーのテクニックですが、現在は

カイロプラクティックや整体と呼ばれるものでもよく使われる、いわゆる

関節をバキバキするテクニックです。

きちんと関節の可動域がわかっている施術者が行えば、特に問題はないの

ですが、中途半端にやり方だけを学んだ人達がこのテクニックを使用して

今までにも、数多くの問題が起きてきたようです。

ちなみにオステオパシーの業界では、私が知る限りこのテクニックで大きな

障害を起こしてしまったという話は聞いたことがありません。

まず、一般的に言われているHVLAの原理をクチェラ・マニュアルを

参考にして、書きたいと思います。
  

 

 


$白山オステオパシー院長のブログ


 図が小さくて、解りにくいかもしれませんが結論から言うと筋肉にある


固有受容器による反射を利用していることになっています。

以前「筋肉と腱」の回に筋肉の構造を書きましたが、筋肉にある固有受容器

には筋紡錘内にある、らせん終末(Ia線維)、散形終末(Ⅱ線維)、

そして腱の部分にあるゴルジ腱器官(Ib線維)の3種類がありますが

これらの反射により、筋肉の異常緊張を取り除くということになっています。

かなり図が小さくて申し訳ありませんが、図の中に例1、例2と書いてある

2つの反射弓が載っています。

例1がゴルジ腱器官の反射弓、例2が筋紡錘の反射弓です。

ではそれぞれの説明をクチェラ・マニュアルから抜粋したいと思います。



例1  ゴルジ腱器官

硬くなった筋の錘外線維の伸張はゴルジ腱器官を引っ張り、反射的にその

筋の収縮を抑制する。

ゴルジ腱器官はスプリンギング、揉捏、伸張するためのしっかりとした押圧

、または素早い直接的手技であるスラストによって刺激される。


例2  筋紡錘

体性機能障害の治療に用いるスラストは、方向を定めた高速だが低振幅

(1/8~1/4インチ=3~6mm)の活性化力である。

スラストの理論的裏付けは次の通りである。

収縮した筋を強制的に伸張(または維持された抵抗に反して伸張)すると

筋紡錘からCNS(中枢神経系)に連続的に求心性インパルスが発射される

ため、CNSはγ(ガンマ)運動ニューロンに抑制インパルスを送り出して

筋紡錘へのγ活動を弱めるので、その体性筋は弛緩する。

これが中枢抑制反射である。



では次にこの論理の問題点を挙げたいと思います。


  1、以前にも書きましたが、スラストは筋肉だけでなく靭帯などの

    結合組織にも使われます。結合組織中には筋紡錘やゴルジ腱器官

    が無いため、上記の反射弓の理論ではなぜ結合組織が柔らかく

    なるのか説明できません。

  2、ゴルジ腱器官の抑制反射は、確かに起こり一時的には筋肉が

    弛緩します。

    しかし、私が自分の側頭筋の中で部分的に異常緊張を起こして

    いる線維を使い、ゴルジ腱器官のIb抑制が起こってから

    どのくらいの時間で元の緊張状態に戻るかを測ったところ、

    わずか数10秒でした。

    この程度の時間では、一時的に筋は弛緩してその部分の血流は

    改善されるものの、問題を取り除けるようなものではなさそう

    です。



これらのことから、私はスラストは固有受容器の反射弓を利用してSD

(体性機能障害)を取り除いているのでは無い、という結論に達しました。

では、なぜスラストでSDが取り除けるかの私なりの考えを、次回は

書きたいと思います。