トリガーポイント

 

以前、少しだけ触れたことのある「トリガーポイント」について

書きたいと思います。

これはアメリカで医師をしていたジャネット・トラベルMD(1901-

1997)が発表したものです。

トラベルはデビッド・サイモンズと共同で「トリガーポイントマニュアル」

という本を出版するとともに、J・F・ケネディ大統領の筋・筋膜痛を

治療したことにより、のちにケネディ大統領の主治医となりました。

二人の著書によるトリガーポイントの定義は



「押すと鋭い痛みを感じる過敏になった限局性のスポットで


 筋組織の触診可能な索状硬結上の結節の中に存在する」



となっています。

トリガーポイントの特徴としては、その名前の由来にもなっているように、

押すとその部分が痛むだけでなく、他の場所にも痛みを引き起こす引き金に

なることがあるということです。

ですから、体のどこかが痛んでいる場合に実は根本的な原因は全く違う

場所にある可能性もあるのです。

以前に私は、トラベルMDのトリガーポイントもジョーンズDOの

テンダーポイント(圧痛点)も、チャップマンDOのチャップマン反射点も

結局は同じものを違う名称で呼んでいるだけだと思っていると

書きました。

この考えは、今も変わっていません。

要するに私がいつも言っている、腱の部分などの沈着物ということに

なります。

トラベルのトリガーポイントとジョーンズのテンダーポイントを他の場所

への放散痛、あるいは関連痛があるかないかで分ける考え方もあるよう

ですが、カウンターストレインについて書いたようにカウンターストレイン

でも圧痛点がある場合は、全く別の場所に局在のはっきりしない痛みが

出ることがあります。

ですから、この区分けもほとんど意味が無いと思っています。

このトリガーポイントの治療にトラベルとサイモンズが「ワークホース法」

と呼んでいたものがあります。

現在では「スプレー&ストレッチ」という名称で呼ばれているものです。

これは、トリガーポイントのある部分にフッ化メタンなどをスプレーして

冷やすことにより痛みの感覚を麻痺させ、その間に収縮してしまっている

筋肉を術者がストレッチして、正常な状態に戻すというものです。

この「スプレー&ストレッチ法」の理論的根拠となっているのは

メルザックとウォールにより提唱された「ゲートコントロール説」

というものです。

これにより、なぜ患部を冷やすことにより痛みを感じなくなるかを説明して

います。

一般にトリガーポイントと呼ばれるものがある部分は触れば明らかな

組織変化がありますし、年季が入ったものは1回では無理ですが

軽いものの場合は手で比較的簡単に取り除けます。

今から、あえて少し攻撃的なことを書いてみたいと思います。

今後「痛み」についても書くつもりですのでその時に詳しく書きますが

最近は「痛みを取り除きます」という病院、「ペインクリニック」

というものが流行っているようです。

しかし、中身を見るとほとんどが「ブロック注射」による治療です。

「トリガーポイントブロック」などという言葉も出ていますが、内容を

読む限り、痛みについてほとんど何も解っていない印象を受けます。

いろいろな説明を書いていますが、実際のところ医師もなぜ痛みが

取れるのかわかっておらず、

「よくわからないけど、今までにこれで痛みが無くなった人がいるので

 とりあえず、やってみましょう。」

という感じではないでしょうか。

治療する医師が自分がやっていることの意味をわかっていない。

これを果たして科学的な医療と呼べるのでしょうか?

しかも、痛みを発している筋肉に過剰な負担をかけている根本的な問題は

他の部分の場合もあるのです。

これでは、仮にその時は痛みが取れても本当の意味での治癒とは

言えません。

根本的な原因を取り除かなければ、また同じ場所に痛みが再発する

可能性が高くなります。

お医者さんはそのあたりのことを、どう考えているのでしょう。

「トリガーポイントブロック」を行なっているお医者さんに一度

聞いてみたいものです。

次回から2回に分けて「スプレー&ストレッチ法」の理論的根拠と

なっている「ゲートコントロール説」の説明と、私が普段の施術で

体験していることから、少し違う説の2つを書きたいと思います。