体内の沈着物除去法-不飽和脂肪酸

 

前回は、体内に蓄積したタンパク質を化学的に除去する方法の1つとして、

プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)について書きましたが、今回は

脂肪酸について、書きたいと思います。

脂肪酸は細胞膜や、ホルモン様物質の材料にもなりますし、ビタミンA,D

E,Kなどの脂溶性ビタミンの吸収にも関わっています。

まずは、下の図を見てください。



$白山オステオパシー院長のブログ


文字が小さくて見にくいかもしれませんが、脂肪酸の一種であるリノール酸と

アルファ・リノレン酸の構造を示した図です。

脂肪酸の構造というのは、簡単にいうと炭素原子(C)が鎖のように一本に

つながり、そこに水素原子(H)や酸素原子(O)が結びついているもの

です。

この原子の数や、結びつき方によって脂肪酸の種類が決まります。

化学式で書くと

   (CH₂)nCOOH

で表され、nの数が増えるほど疎水性が強くなります。

脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類があると聞いたことがあると

思いますが、これは炭素原子の結合のしかたによって決まります。
  
解りにくい部分もあるかもしれませんが、こういうものだと思って読んで

ください。



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  ・飽和脂肪酸


    炭素鎖に二重結合、三重結合を有しない(飽和である)

    常温で個体。動物性のラードなど。ステアリン酸、パルミチン酸など。

  ・不飽和脂肪酸

    炭素鎖に二重結合を有する。

    常温で液体。植物油。オレイン酸、リノール酸、リノレン酸など。

     
  また不飽和脂肪酸には上図のようにシス型結合、トランス結合と

  2種類の結合のかたちがあります。

  
  ・シス型不飽和脂肪酸

   上図のようにHとアシル基(斜めの線の部分)がそれぞれ同じ側にある。

   自然界に存在する不飽和脂肪酸は、ほぼ全てこのかたち。

   この形だと動きやすいため、常温で液体。

  ・トランス型不飽和脂肪酸

   上図のようにHとアシル基(斜めの線の部分)が、反対の位置にある。

   マーガリンのように人工的に硬化させた不飽和脂肪酸はこのかたち。

   常温で固体。


  さらに、不飽和脂肪酸は二重結合の数で一価、あるいは多価脂肪酸という

  分類のしかたもあります。

   
  ・一価不飽和脂肪酸

   二重結合の数が一つ。

  ・多価不飽和脂肪酸

   二重結合の数が複数。特に二重結合の数が四つ以上のものを

   高度不飽和脂肪酸と呼びます。


一価、多価の性質としては、いろいろな説がありますが、確証がないので

ここには書きません。

次に代表的な脂肪酸と、それらがどのような食品に多く含まれているかです。



分類         脂肪酸名       多く含まれる食品

飽和脂肪酸
(二重結合なし)   
           ラウリン酸      バター、ココナッツ、ヤシ油
           
           ミリスチン酸     バター、ヤシ油、パーム油
           
           パルミチン酸     バター、豚脂、牛脂
           
           ステアリン酸     バター、豚脂、牛脂

一価不飽和脂肪酸   
(二重結合1個)

           オレイン酸      オリーブ油、ダイズ油、豚脂
     

多価不飽和脂肪酸   
(二重結合2個以上) 
           リノール酸      紅花油、コーン油、ダイズ油
             
           アラキドン酸     卵、肉、魚、母乳
           
           α-リノレン酸    シソ油、亜麻仁油、キウイ
      
           EPA         さば、いわし、にしん
           
           DHA         さば、いわし、まぐろ
 

次にそれぞれの脂肪酸の融点を書きます。


           脂肪酸名       融点
        
飽和脂肪酸      

           ラウリン酸       48℃

           ミリスチン酸      53℃
        
           パルミチン酸      64℃

           ステアリン酸      69℃

不飽和脂肪酸  
  
           オレイン酸      -14℃

           リノール酸       -9℃

           リノレン酸      -11℃


今回は脂肪酸の説明だけで、ずいぶんと長くなってしまったのでこの脂肪酸と

体内に沈着したタンパク質の除去とどのような関係があるかは、次回書きたい

と思います。