新ゲートコントロール説(真野説)

 

 前回はメルザックとウォールの提唱したゲートコントロール説について

書きました。

これは伝達速度の速い神経線維が、より伝達速度の遅い神経線維の情報を

抑制してしまうという理論です。

しかし、私はこの抑制が起こるのは神経線維の伝達速度の違いではなく

その、知覚受容器からどのくらいのインパルスが発射されているかという

情報の量に関係しているのだと思っています。

例をあげます。

私の所にある方が、背中、首などの痛みで来たとします。

そういう方の場合は根本原因はともかくとして、まずはその痛みを

取ってあげるのが先決だと私は思っていますので、痛みの発している

筋、筋膜などの問題を取り除いてから、他の部分の施術を行ないます。

そういう人達は、次に来た時に

「肩の痛みはなくなったけど、今度は腰が痛くなり始めた。」

などと言う場合がよくあります。

私が腰を見ると、どう見ても最近起きた問題ではなく、そうとう以前

から問題があったことがわかります。

患者さんにそのことを伝えると、

「そういえば10年くらい前にぎっくり腰をやったことがあります。」

などと、最初の問診票にも書いていないような話が出てきます。

このような場合、肩の知覚受容器から大量の信号が送られて来ていたため

腰の受容器からの入力が長いあいだ抑制されていて、意識にのぼらなかった

と考えることができます。

そして、肩からの入力が減少したために優先順位が逆転して腰からの痛みの

入力が1番上位に来て、腰が痛みだしたと考えられます。

別の例をあげます。

私は一通りの施術を終えると患者さんに座ってもらい、どこか気になる

ところがないか聞きます。

患者さんが「背中の右側に少し突っ張る感じがある。」と言ったとします。

私がその問題を取って、もう一度聞くと「今度はもう少し下のところが

気になる。」となります。

結局、その時に受容器からの入力が1番多い物が常に意識にのぼって

来ているのだと思います。

こういう場合は、少し時間が経つと自然と問題が取れる場合も多いので

2つくらい取って、そのことを患者さんに説明して終わりにします。

例をもう一つ。

私は触診、あるいは治療の時に目を閉じて行うことがよくあります。

それは、目を閉じることにより自分が触っている組織の状態が

目を開けている時よりも、はっきりと解るからです。

目からの情報はあらゆる感覚器の情報のおよそ80%を占めると

言われています。

ですから、この全体の80%の入力をゼロにすることにより視覚器の

情報の入力量よりも下位にあった、手の感覚器からの入力が最も

上位に来ることによって、よりはっきりと脳に意識されるためだと

思います。

ですから私なりのゲートコントロール説は

「ゲートのコントロールは神経線維の種類ではなく、どれだけの量の

 求心性信号が受容器から出ているかで決まり、もっともインパルスの

 発射頻度の高い受容器からの情報が他の知覚器の情報に抑制をかけて

 意識にのぼらないようにしている。」

ということになります。

これなら、普段私が体験していることも「スプレー&ストレッチ法」も

矛盾なく説明できます。

そう考えると、もっといろいろな方法が考えられるのではないでしょうか。

例えば、ヘッドホンで大音量の音楽を聞かせながらストレッチする

「ヘビメタ&ストレッチ」、あるいはくさやの匂いにより嗅神経に大量の

情報を送り込みながらストレッチする「くさや&ストレッチ」なども可能

かもしれません。

「くさやの匂い」と「痛み」のどちらが、その人にとってより耐えがたい

かという問題はありますが・・・。

ちなみに私の普段の施術では痛いこと、臭いことは一切しませんので

ご安心下さい。