筋エネルギーテクニック(MET)の原理(真野説)

 

今回はMETの原理に関しての、私の考えを書きたいと思います。

スラストの時にも書きましたが、やはりいつものタンパク質の除去を

行なっているということになります。

METの場合は、スラストのように瞬間的な力を加えるわけではないので

どちらかというと、カチッと制限がはっきりわかるタイプよりも、

なんとなくバリアがはっきりしない、まだ比較的やわらかい沈着物の

除去に向いていると思います。

METでは、まず施術者が制限されている可動域いっぱいのところまで

関節を動かしていき、緊張している筋肉をピンと張らせます。

その状態で、患者(日本では患者という言葉は使えませんが、とりあえず

ここはアメリカの本に合わせます。)はその筋肉に力を入れます。

すると腱の線維の間にも入り込んでいるタンパク質の沈着物は外側に

押し出されてしまいます。

その結果、筋紡錘が受けている張力が減少して筋紡錘の固有受容器からの

インパルスの発射頻度が減ることにより、錘外筋のトーヌスは減少する

ことになります。

また腱の外側に押し出されたタンパク質は、間質液の流れにより徐々に

リンパ系に吸収されますので、筋紡錘の張力が元に戻ることはありません。

一方、問題の起きている筋の拮抗筋を使用する相反抑制を使ったタイプの

METの方法ですが、このタイプは通常は筋肉が痙攣している、あるいは

寝違えの時のように、痛くて目的とする筋肉を収縮させることができない

時に使用します。

このような場合は、錘外筋のトーヌスがかなり高くなっていることが

考えられます。

ですから、拮抗筋を収縮させただけでも間接的に異常に緊張した側の

筋肉が引っ張られて、余計な沈着物を少しづつ取り除くことができて

いるのではないかと思っています。

ところで、METの方法としては一回に収縮させる時間は5秒くらいで

それを何回かに分けて、行わなければならないというルールがあります。

その理由についてミッチェルJr.は次のように仮定しています。



「等尺性収縮にすぐ引き続いて、神経筋装置は無反応状態になり、

 その間は強い筋張力反射の妨害に遭遇することなく受動的伸張を

 行うことができる。オステオパシー医師は、まず筋の収縮に抵抗し

 次いで弛緩した無反応の間に筋膜の緩みを取ればよい。」



しかし私の理論で考えると、特にその必要は無く例えば施術者と患者が

お互いに疲れない程度の力で持続的に、力を入れつづけるという方法でも

問題ないことになります。

試しに、実際にこの持続的な抵抗という方法を股関節の部分に使用した

ことがありましたが特に問題も出ずに、かなりの効果を上げることが

できました。

またオステオパシーの初期の時代にT・J・ルディーが行っていた

「抵抗導入」というテクニックがあります。

この方法は医師が患者の能動的運動に抵抗を加える、というものですが

患者は素早い(速さにして毎分60往復程度)速さで動くことを要求

されます。

私の考え方でいけば、この方法も持続的な抵抗と同様にかなりの効果を

あげられるのではないでしょうか。

患者にとっては、かなり大変な治療法だとは思いますが・・・。

ところでMETを治療に使っている方で、この5秒X数回というルールを

無視して、問題が起こったことがあるという方はいるのでしょうか?