採血に関する考察。

 

私も不惑の40代になりましたので毎年、文京区から無料健康診断の


通知が届きます。(本当に不惑か?という突っ込みは無しです。)


普段まったく病院には縁のない私ですが、自分の体の状態をチェックする


ためにも、この健康診断だけは必ず受けています。


私は、あえて受診する病院を毎年変えているのですが今年の病院の


看護師さんのおかげで、長年の疑問が解けました。


健康診断その他で、恐らくこれまでの人生で20回以上は採血をされて


いると思いますが、ほとんどの看護師さんが肘のやや内側にある一番


太い静脈から採血していました。


しかし、過去には前腕外側にある見た目にはわかりにくい細い静脈から


採血した看護師さんが二人ほどいました。


そして、今回その珍しい場所から採血する3人目の看護師さんに


当たったのです。


最初、たいていの看護師さんが採血をする太い静脈をチェックしてから


前腕の外側の細い静脈をチェックし始めました。


私は、もしや?と注意深く見ていると、やはりそのわかりにくい細い静脈に


採血の針を刺しました。


そこで、長年の疑問を晴らすためにその看護師さんに聞いてみたところ


3つの理由をあげてくれました。

  
  1、近くに神経があまりないので、神経を傷つけるリスクが少ない。

  2、深部に動脈がないので、誤って針が静脈を貫通しても

    動脈を傷つけるリスクが少ない。
  
  3、腕の内側よりも外側のほうが痛みを感じにくい。


ということでした。


今までに、この外側の静脈から採血した看護師さんはいずれもある程度


経験を積んでいそうな人達だったので、自分の腕に自信があって更に


患者さんへの負担や、事故のリスクを極力避けるということを考えると


この場所になるようです。


では看護師さんが説明していたことを、図を見ながら確かめてみましょう。




まずは肘関節周辺の静脈および動脈の図。


白山オステオパシー院長のブログ


白山オステオパシー院長のブログ




上の静脈の図でいうと、正中皮静脈が肘の部分で内、外側に分岐した後の


内側方向、尺側正中皮静脈の部分で採血するケースが一般的ですが、今回の


看護師さんは正中皮静脈より外側の橈側皮静脈に針を刺して採血しました。


上の二枚の図を重ねると尺側正中皮静脈の深部は上腕動脈が橈骨動脈と


尺骨動脈に分岐する部分になりますので、やはりここに針を刺すと動脈を


傷つけてしまうリスクは高そうです。


次に皮静脈と皮神経の位置関係。


$白山オステオパシー院長のブログ


この図を見ると橈側皮静脈は外側前腕皮神経と並行して走行していますが、


尺側皮静脈から正中皮静脈にかけては内側前腕皮神経と交差しているのが


わかります。


静脈、動脈、神経の解剖学的な位置関係からも、やはり動脈や神経を


傷つける危険性を減らすには橈側皮静脈から採血する方がよいようです。


ただ、橈側皮静脈が細かったり、皮下脂肪が厚くてわかりにくい場合には、


この限りではないと思いますが。


最後に、内側より外側の方が痛みが少ないというはなしですが、


これも納得できる話です。


人のからだというのは、その部位によって知覚受容器の数にかなりの


ばらつきがあります。


指先などは当然受容器の数が多いですし、逆に背中などは少なく


例えば、開いた2本の指で触っても1本にしか感じられないほど、


知覚に関しては鈍感です。


上半身は背面より前面、下半身は前面より後面、一般的に皮膚の


柔らかい部分は敏感になっています。


ですから肘の部分も正中皮静脈の部分よりも橈側皮静脈の部分の


方が痛みを感じにくいということになります。


オステオパシーには内臓疾患の診断および、治療に使用される


チャップマン反射点というものがあります。


チャールズ・オーエンズDOは前面の反射点は診断と治療後の


評価のために、背面の反射点は治療のために使用するということを


書いていますが、これも前面と背面の知覚の感度の違いを考慮しての


ことではないでしょうか。