オステオパシーの源流は日本?(2)

 

フルフォード先生が、「いのちの輝き」の翻訳者である上野圭一氏に


示した、マンリー・P・ホールの「人間」という本ですが、その内容が


気になり、結局アマゾンさんで購入することに。


しかし、この類の本にはありがちなことですが、この「人間」も


やはり、絶版本でした。


中古の相場を見ると案の定、どれも定価よりも高い価格設定。


これまでも必要に迫られて、あるいは中味が気になって、定価より


かなり高額な絶版本を何冊も購入してきましたが、今回もどうしても


内容を知りたくて、思い切って買ってしまいました。


で、その本ですが、やはりフルフォード先生らしいというべきか、かなり


きてます。


では、その帯に書かれている文章を紹介しましょう。



「人間 - 密儀の神殿」


人体は人間の「聖なる住処」である。


脳・心臓・神経・視覚他、大宇宙に照応する小宇宙としての


人体が持つ象徴的意味に着目し、カバラ的、ヘルメス学的伝統に


のっとって徹底解剖した神秘主義的身体論の最大傑作





もうこれを読んだだけで、かなりヤバいですが中身も案の定という感じ


でした。


これではとても「白山オステオパシー文庫」の待合側の本棚には、並べる


ことは出来ません。


「裏文庫」に並べておきますので、もし読みたい方がいましたら、直接


私に言ってください。


ところで、肝心の「オステオパシーの源流は日本」という部分ですが、


序文のところに載っていました。


では、関連する部分のみ抜粋します。



さらにわれわれは日本の整骨療法に関する文献を蔵書の中にもっている。


文化五年(1808年)、江戸で出版された本で、日本名は「医範提綱」


(整骨療法に関する教科書)である。


この本は、背骨の修正、脱臼、傷害の直し方などを表す木版画で、


ことこまかに説明されているが、その技法は現在西洋で利用されている


ものとよく似ている。


この本が書かれたのは、通例、整骨療法の発見者とされるスティル博士の


生誕に先だつこと二十年である。




上記のような記述が「人間」の序文に、たしかにありますがここに書かれて


いる「医範提綱」は解剖学書で、整骨療法に関する教科書ではありません。


せっかくですので、この「医範提綱」についても調べたことを書きます。


「医範提綱」


著者 宇田川玄真(1770~1835)


宇田川玄真は江戸時代の蘭学者、翻訳家で数多くのオランダ語の本を日本語に


翻訳し、出版しました。


本名は安岡玄真で、あの「解体新書」を著したことで有名な杉田玄白の養子と


なりましたが、放蕩癖があり離縁されています。


その後、蘭学者を多く輩出している宇田川家に子供がいなかったために、


宇田川家の養子となっています。


マンリー・ホールの「人間」には「医範提綱」の出版年が1808年と


なっていますが、正確には「医範提綱」の出版年は文化2年(1805年)で


その後出版された「医範提綱内象銅版図」が文化5年(1808年)の


出版となっています。


この「医範提綱」の特筆すべきところは、この本において宇田川玄真が


オランダ語から考え出した用語が、現在の日本における解剖学用語の基礎


となっていることです。


例えば「医範提綱」での訳語である小腸、大腸、結腸、尿道、膣、腱、靭帯


などは現在でも使用されていますが、これらは杉田玄白の「解体新書」では


薄腸、厚腸、縮腸、小水管、莢、筋根、蛮度などと訳されています。


また乳糜、腺、膵なども玄真による訳です。


では国会図書館に行って、デジタルデータからコピーしてきた「医範提綱


内象銅版図」の一部です。


もとがオランダ語の解剖学書なので顔が西洋人風ですが、用語の部分には


鎖骨下動血脈、腸骨静血脈などの文字を見ることが出来ます。



白山オステオパシー院長のブログ  東京都文京区 白山駅より徒歩3分
白山オステオパシー院長のブログ  東京都文京区 白山駅より徒歩3分



参考までに、日本の解剖学に関する年表です。


 1754年(宝暦4年) 山脇東洋が日本で初めての人屍解剖を行う

 1774年(安永3年) 杉田玄白がオランダの解剖学書「ターヘル

              アナトミア」の翻訳本「解体新書」を著す

 1792年(寛政4年) 広島の医師、星野良悦が世界最初の木製の

              人体骨格模型「身幹儀(星野木骨)」を制作する

 1805年(文化2年) 宇田川玄真が現在の解剖学用語の基礎となる

              「医範提綱」を著す




では実際のところ、マンリー・P・ホールの蔵書の日本の「整骨療法に


関する教科書」とは何だったのかということですが、私の推察するところ


では、二宮彦可の著した「正骨範」、あるいは各務文献の著した「整骨新書」


このどちらかではないかと思います。


本の内容的には「正骨範」が、よりオステオパシーに近いと思うので、


次回は「二宮彦可」と「正骨範」について書きます。