スティルのテクニック(4)

 

今回は、私がスティルの著書やその他の本を読んで考えた、スティルの


テクニックについて書きます。


これは私がいつも言っている結合組織内の沈着物の除去という観点から


自分なりに分析したものです。




スティルがおこなっていたことは、大きく分けて3種類になると考えて


います。




   1、電光石火の整骨医と呼ばれる元となった、比較的早い動きの

     直接的な方法。



   2、直接的な方法ではあるが、組織のリリースを感じ取りながら

     比較的時間をかけておこなう方法。



   3、間接的に組織への圧迫、あるいは変位の誇張などにより、組織の

     リリースを感じ取りながら比較的時間をかけておこなう方法。



では、それぞれについてスティルがおこなっていた内容を紹介したいと


思います。




1、電光石火の整骨医と呼ばれる元となった、比較的早い動きの

  直接的な方法。



この方法の代表的なものは、やはり前回紹介した8ミリ映像でしょうか。


この方法は、原理的にはスラストに近いと考えています。


比較的短時間で、結合組織に溜まった沈着物を物理的な力で破砕して


間質に出し、治療後に普段の生活の中で体液の流れにより徐々に沈着物が


洗い流される、と私は考えています。


ですから、この方法はスラストと同じように治療後に比較的痛みが出やすい


方法だとも言えます。




2、直接的な方法ではあるが、組織のリリースを感じ取りながら

  比較的時間をかけておこなう方法。



これも基本的には1と同じ方法ですが、8ミリ映像のような比較的早い


動きではなく、ある程度組織の状態を感じとりながらおこなう方法です。


では、その1例を挙げます。



頚椎(OA/AA関節)


通常、片手を患者の後ろにあてがって、指が横突起のあたりに


くるようにして、患者の頭を指の方、つまり自分から遠い方に


傾ける。


指を硬い突起にしっかり当てて、全ての靭帯が自由になり


異常な位置に拘束されていないと確信できるまで、頭にごくわずかな


ひねり運動を加える。


治療のこの段階では、片手の指を頸部の前側に、もう一方の手の


指を後ろ側の下顎骨と環椎および、軸椎との間にあて、一般に


認められる下顎骨とのもつれから頭蓋骨を引き離すことができるように


十分強い力で、徐々に、しかししっかりと引っぱる。




この内容とバスカークDOの「スティルテクニック」に載っているOAの


治療方法を比べればわかると思いますが、両者は全くの別物と言っても


よいと思います。


バスカークDOのテクニックでは、よくOA右側に見られるような頑固な


固着をリリースさせることは、ほぼ不可能です。




3、間接的に組織への圧迫、あるいは変位の誇張などにより、組織の

  リリースを感じ取りながら比較的時間をかけておこなう方法。





この方法は、いわゆるトラクションメソッドと呼ばれる、初期の


オステオパス達が使用していたものです。


現代のオステオパスでは、その存在さえ知らない人もいるかも


しれません。


「オステオパシー総覧」では「機能的テクニック」として紹介されて


いるものが、これに近いかもしれませんが「機能的テクニック」では


治療の際に患者へ呼吸の指示を求めることが必要である、と書かれて


います。


しかし、トラクションメソッドに関して言えば患者への呼吸の指示は


必要ありません。


私も少ない資料を元に試行錯誤を繰り返し、開業して数か月してから


やっとうまく使いこなせるようになりました。


開業当初から来ていただいている方の中には、私がいつもいろいろな


実験をしているのを知っていて「いつでも実験台になってあげるから」


と言ってくれる方もおり、非常に助かります。


(危なそうなことは、自分の体でやりますけどね。)


現在は普段の施術でもよく使用しますが、カウンターストレインよりも


短時間に、しかもいくつもの問題をまとめてリリース出来る非常に


優れたテクニックです。



ではこの方法についてDr.アシュモアが述べた内容です。



トラクションメソッドを使う人々は、障害の誇張と称される方法で


関節周囲の組織を確実に弛緩させる。


障害の誇張とは、変位を増悪させるのがその目的であるかのごとく、


障害が発生する際に強制された方向へ動かすことを意味する。


これにより、身体の一部を異常な位置に縛り付けている組織を


リリースできる。


とDr.マコーネルは述べている。


誇張が維持され、関節に牽引が加えられると復位が開始され力が


逆転して完了する。



またDr.アシュモアはトラクションメソッドは直接法よりも難解で、


学生の指導には用いるべきではないと述べています。


確かに、この方法はある程度の触診能力が備わらなければできませんが


それは、スラストなどの直接法でも同じことですからオステオパスならば


より安全で、しかも効果の非常に高いこの方法を使えるようになるべき


だと、私は思っています。


ちなみに、この原理ですが私は組織を弛緩させた状態で体液の流速を


速めて、沈着物を洗い流しているのだと考えています。


直接的に制限方向に組織を持って行っても、同じことができますが


体液の流量が低下するために、リリースまでにより多くの時間が


かかってしまいます。



以上が、私の考えるスティルのテクニックです。


恐らく、私がスティルのテクニックについて、これまで書いてきたことを


読んだ日本のオステオパスの中には、私が書いていることに対して


反感を持つ方もいるかもしれませんが、私が自分自身でいろいろと


試した結果、この考え方が最も矛盾なく、スティルの記述や施術の際に


体の反応として起きたことを説明できたということです。


結局は何をするにもスティルが繰り返し言っているように、


「組織の正常と異常を理解する」ということが、大前提ですが。