喘息--気管部分の解剖学
これまで、スティルとケイシーの喘息の原因と治療法を書いてきました。
今回は私なりに考えた原因を書く前に、咳とは何か?、そして気管部分の
解剖学について説明したいと思います。
まず、喘息の症状である「咳」とはなにか?
ちなみに「咳」は医学用語では「咳嗽(がいそう)」と言います。
咳(咳嗽)とは?
咳は誤嚥(食物が誤って食道から気道に入ってしまうこと)や空気中
のほこりなど、気道になんらかの異物が入った時に、それを排出するために
反射的に気管、喉頭、呼吸筋などを収縮させることにより起こる。
また気道の刺激受容器は異物だけでなく、細菌、刺激性のガス、冷たい空気
などにも反応する。
咳嗽反射
咳の刺激受容器は喉頭、気管、気管分岐部などの粘膜表層部に分布し
irritant receptor(イリタント レセプター)と呼ばれる。
この刺激受容器は刺激が加わると直後に強く興奮し、短時間で
活動が止まる。
求心性線維は迷走神経の有髄線維であり、刺激があると即座に気道に
混入した異物を排出、除去する反射に適している。
(説明
求心性とは知覚受容器などから脳に向かう側のこと。この反対に
脳から筋肉などに向かう側は遠心性という。迷走神経は脳神経の10番、
頭蓋骨の頸静脈孔から頸部を下り、主に横行結腸までの内臓副交感神経を
支配している。有髄線維とは、神経に髄鞘というものが巻き付いている
伝達速度の速いタイプの神経線維。)
まずは咳嗽反射の刺激受容器がある、気管部の解剖学からです。
前面図
気管というのは、C字形をしたリングのような軟骨が線維組織に
よって、つながった形になっています。
後面図を見ると解りますが、気管後面の食道に接する部分には軟骨が
無く、膜性壁というものでつながっています。
この膜性壁は胃や腸などと同じ平滑筋という筋肉でできているため
自律神経に支配され、自分の意思で気管を収縮させたり、拡張
させたりすることはできません。
神経系は脳神経10番の迷走神経の枝である左右の反回神経および
下喉頭神経(これらは副交感神経)、そのほか交感神経の枝も受けて
います。
動脈系は下甲状腺動脈からの気管枝(鎖骨下動脈からの分枝)、後方
からは胸大動脈からの気管支動脈、、前方からは内胸動脈の
縦隔枝が分布しています。
静脈系は気管の周囲に網の目状に分布し、左右の腕頭静脈および
奇静脈系に集まっています。
リンパ系は粘膜部分に多く分布し、そこから気管気管支リンパ節、
気管支傍リンパ節へ流れ気管支縦隔リンパ本幹から直接鎖骨下静脈へ
あるいは胸管、または右リンパ本幹経由で静脈角に注ぎます。
次に私が最も重要視している、頸部の筋膜部分です。
私がいつも言っている沈着物はこの筋膜などの結合組織に溜まって
いきますので、頸部の筋膜がどのような構造になっているかを
知らなくては治療することもできません。
頚部筋膜は主なものとして表層に頚筋膜浅葉、気管の前部に頚筋膜気管前葉
頚椎の前部に頚筋膜椎前葉、また頸動脈、頸静脈、迷走神経を包んでいる
頸動脈鞘などがあります。
今回はここまでにして、次回は私なりの喘息の原因を書きたいと
思います。