スティルのテクニック(1)
オステオパシーの創始者A・T・スティルは当時「Lightning Born
Setter」(電光石火の整骨医)と呼ばれていましたが、彼は解剖学と
生理学がわかれば、治療方法はおのずとわかると言って、テクニックを
ほとんど学生に教えませんでした。
そのため彼の治療方法に関しては解らない部分が多く、スティルが
使っていたテクニックは、100年以上のあいだ完全に失われて
しまったと考えられていました。
そのおかげで、オステオパシーには様々な治療テクニックが生まれたと
いうことも言えます。
スティルの著書から彼の言葉をいくつか紹介します。
「私は学生に、ある疾患に対して特定の骨、神経、筋を押したり
引いたりせよとは指導していない。
正常と異常を教えることで、すべての疾患に関する明確な知識を
持ってもらいたいと考えているのである。
常に頭の中にいきいきとした映像を持ち続けていれば、関節、靭帯、
筋、腺、動脈、静脈、リンパ管、浅筋膜と深筋膜、器官の全てを
即座に目にすることができる。
また、それらがいかに栄養を与えられ、何をしなければならないのか
なぜある役割を果たすべく期待されるのか、そしてその一部が十分に
機能しなくなった場合、その後に何が起こるのかを即座に理解する
こともできる。
常に頭の中に正常な身体の映像を満たしながら、患者に苦しみを
もたらすものを治療しなさい。」
また別の所では、こうも言っています。
「骨を調整するには、多くの方法があることをはっきりさせておきたい。
もしもある術者が他人と同じ方法を使っていない場合、それは
けしからん無知を暴露しているのではなく、単に結果として異なる
方法を採用しただけなのだ--方法の選択は各術者が決定すべき
問題であり、その人自身の技量と判断によるのだ。--ある名だたる
術者がするとおりの単なる真似ごとではなく、骨を異常から正常に
戻すことが大事なのである。」
以上がスティルの、治療とそのテクニックに対する考えです。
非常に柔軟で、しかも物事の本質を突いた言葉だと思います。
全く同じことを、インドの偉大なヨギであるスワミ・スリ・ユクテスワも
言っています。
「何をするにも人真似ではなく、自分の独自の方法でやりなさい。」
ちなみにスワミ・スリ・ユクテスワも過去の多くのヨギ達と同様に
その最期は、時が来たと言って自ら魂を肉体から離脱させた人の一人です。
西洋医学の医師であったスティルがオステオパシーを始めたのは、
当時の医療現場の薬剤信仰に疑問を持った結果ですが、現代の医師は
これらの言葉を読んで、どう感じるのでしょう。
次回はスティルのテクニックを復活させたと言われているリチャード・
ヴァン・バスカークDOの「スティルテクニック」について書きたいと
思います。