「茶のしずく」石鹸によるアレルギーついて(2)

 

 

 まずは産経ニュースの記事からの抜粋です。



「一般的な小麦アレルギーは、パンやパスタなど小麦食品を食べたことが


 きっかけで発症する。


 これに対し茶のしずくによる小麦アレルギーは、せっけんを使い続け


 たことで、皮膚や粘膜から「加水分解小麦」という小麦由来のタンパク質


 が体に吸収されて起きたとみられている。」




私がこれをはじめて読んだ時は、タンパク質が皮膚表面から吸収される


という部分で、「そんなことありえるの?」と不思議に思いました。


例えば腸内でタンパク質が吸収されるには、通常の生理学で言えば


アミノ酸が数個つながった程度まで分解されないかぎり、吸収されない


ことになっています。


私はこれまで、自分のブログで体のいろいろな反応を見ていると、腸内では


タンパク質のままでの吸収が行なわれているはずだと何度も書いてきました。


しかし、実はいくつかの仮説はありましたが、自分でもどのようにして


それがおこなわれているのか、はっきりとは分からなかったのです。


それが、今回の「茶のしずく」石鹸のアレルギーで謎が解けたのでは


ないかと思っています。


ちなみにある皮膚科のホームページでは、皮膚の傷や湿疹部分から


皮下に入ったと書かれていましたが、今回の件の患者の多さから


言って、これはないだろうと思いました。


調べていくうちに、いろいろなことが解ってきました。


まずは用語の説明からしたいと思います。




・加水分解物小麦とは、


小麦タンパク質を酸やアルカリ、酵素等により加水分解することで


低分子量化したものをいう。


一般に、小麦タンパク質の80%は分子量が約200万のグルテンによって


占められているが、グルテンは構成アミノ酸のうち約3分の1がグルタミン


であるために、グルタミン残基間で形成される水素結合により会合して


水不溶性である。


ところが、小麦タンパク質を部分加水分解すると低分子量化するとともに、


グルタミン酸残基において脱アミド化が進行してカルボキシル基を生じ


親水性が向上する。


このような小麦タンパク質の加水分解物は陽イオン性の解離基(NH3+)と


陰イオン性の解離基(COO-)を併せ持ち両性界面活性剤としての機能を


有する。




またまた難しいことばが、たくさん出てきましたが要約すると小麦の


タンパク質であるグルテンをある程度の分子量まで分解すると、界面活性剤に


なるということです。





・界面活性剤


「界面活性剤」というのは、2つの混じりにくい性質を持つ物質同士


の境界面を活性化させて混じりやすくする物質です。


特に、水と油を混じりやすくする性質を持つものを指します(=洗剤)。


これは、分子のなかに油と結合しやすい部分と水と結合しやすい部分を


もっていて、この物質を介して水と油が結合をするという働きをもちます。


また、表面張力を弱める作用もあります。


石鹸も界面活性剤の1つです。


このうち、水と結合する部分については、ほとんどの物質が「イオン」


になる性質を持っています。


界面活性剤は洗剤の主成分であり、有用な性質を多くもつため工業的に


大量に合成・使用されています。


サポニンやリン脂質、ペプチドなど、天然にも界面活性剤としてはたらく


物質が数多く存在します。





・両性界面活性剤


両性界面活性剤とは、水と結合する部分が陽イオンにも陰イオンにも


なる(=両性)ものを指します。


なお、ここが陽イオンになるものの代表は「逆性石鹸」で、トイレの


洗面所に置かれている緑色の液体石鹸のことです。


また陰イオンになるものの代表は「アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム」


(食器用中性洗剤や洗濯洗剤の成分)や、普通の石鹸などです。


ちなみに、陽イオン界面活性剤や両性界面活性剤は天然には存在しないので


すべて合成になります。


今回のグルパール19Sも原料は小麦ですが、人為的に化学反応させたもの


なので合成と考えてもよいでしょう。




・グルパール19S


グルパール19Sは、片山化学工業研究所が製造販売していた


加水分解物小麦で分子量は約6万。


「茶のしずく」の問題により、現在は製造販売を中止しているようです。


ちなみに、小麦やコラーゲン由来の保湿成分や界面活性剤などを数多く


化粧品メーカーに提供している成和化成というメーカーから出ている


コムギ末「プロモイスWG―SP」は平均分子量が約700だそうです。


低分子のものより高分子のタンパクほどアレルギーを起こしやすいので、


日本化粧品工業連合会ではこの問題を受け、分子量5~6万を超える


コムギ末を化粧品・医薬部外品に配合しないよう通知を出しています。




今回はここまでの説明にして、つづきは次回にします。