筋エネルギーテクニック(MET)の原理(一般説)

 

今回は、筋エネルギーテクニック(MET-マッスルエナジーテクニック)

の原理について、一般的に説明されていることを書きたいと思います。

METは、施術者が短縮した筋肉を、制限を受けている関節可動域の限界まで

持っていき、そこで相手にその筋肉に力を入れるように指示する。

そして施術者は、患者の力に対して抵抗するように力を入れる。

この動作を何回か繰り返すことによって、短縮した筋肉や周囲の組織を

徐々に伸ばしていくというものです。

専門的な言葉でいうと、筋肉の等尺性収縮を利用するということになります。

METには、大きく分けて2種類の方法があります。

1つは短縮している筋肉に直接作用させる通常の方法。

もう1つは、短縮している筋肉の拮抗筋を利用する方法です。

では、またクチェラ・マニュアルを使って一般的に教えられている、それらの

原理を説明していこうと思います。


1、通常の方法


$白山オステオパシー院長のブログ


これは直接的治療法であり、一般的なタイプの筋エネルギーによる活性化

である。患者は筋を収縮して関節が動きたい方向へ関節を動かす。

(高いガンマ・ゲインを伴う筋を活性化する)と同時に術者は等尺性の

抵抗を加える。同等の力による術者の抵抗に対して、患者が硬くなった

筋塊を収縮するとゴルジ腱受容器が引かれて、ゴルジ器官の反射メカニズム

が起こり、同筋の錘外筋塊は反射的に弛緩する。患者が完全に弛緩した

時、術者は関節を新しい制限障壁に進める。そして新しい長さとなった

ところを再びゴルジ受容器は(等尺性収縮により)引き伸ばされて、再び

その筋の長さを増大する。


2、相反抑制を利用した方法


$白山オステオパシー院長のブログ

これは通常の適用とは逆の筋エネルギー要素を用いる。それは相反抑制反射

と筋紡錘により作用する。この技法では過緊張の筋を伸長せず、相反する

拮抗筋を伸長する。拮抗筋群(運動制限方向に関節を動かす筋群)の

引く力に抵抗して術者は等尺性収縮行い、術者は相反抑制という生理学的

原則により痙攣する筋群を弛緩させる。中枢神経系(CNS)は、亢進した

錘外筋塊(最初にガンマゲインが高くなった筋塊)を支配するアルファ運動

ニューロンを抑制する。同様のメカニズムがガンマ運動ニューロンにも影響

すると考えてよかろう。



以上が、クチェラマニュアルによるMETの作用原理です。

確かに理論的にはあり得そうな原理ですが、しいて言えばゴルジ腱器官の

Ib抑制は基本的には強力な腱の引っ張りに対して腱が骨から剥離したり

筋線維が断裂したりすることを防ぐもので、Ib抑制を起こすためには

かなり強い力が必要となります。

私が自分の側頭筋の腱の部分を、押し付けてIb抑制を起こさせた時も

痛くなるくらいのかなり強い力で押し付けなければ、反射は起こりません

でした。

METはよく股関節周囲の筋肉に使用したりしますが、基本的にMETは

それほど強い力は必要としないので、はたしてMETで使用する程度の

力で股関節周囲の強力な筋群に、本当にIb抑制が起こっているのかどうか

は疑問です。

次回は、私が考えるMETの原理を書きたいと思います。