結合組織内へのタンパク質蓄積を証明する方法(2)

 

前回、タンパク質の行方を追うには口から摂取された窒素(N)を


たどっていけば良いと書きました。


その方法ですが、これはドイツの生化学者ルドルフ・シェーンハイマー


(1898-1941)が考え出した方法とNMR(核磁気共鳴)を


組み合わせれば可能なはずです。


その方法を説明するには、まず元素の同位体(アイソトープ)について


説明しなければなりません。




同位体


同位体(どういたい、isotope、アイソトープ)とは、同じ原子番号を持つ


元素の原子において、原子核の中性子の数(つまりその原子の質量数)が


異なるものをいう。




例えば窒素(N)の原子番号は7です。


これは窒素の原子核の中には7個の陽子と7個の中性子が含まれ、質量数は


7+7=14になるということです。


しかし、自然界には原子核の中に8個の中性子が入っているものが存在


します。


これを重窒素と呼び、質量数は7+8=15となります。


ルドルフ・シェーンハイマーはこの重窒素を「追跡子(トレーサー)」として


生物実験に使用するという画期的なアイデアを思いつきました。


タンパク質を構成するアミノ酸には窒素が含まれていると前回書きましたが


通常は食物に含まれるアミノ酸は体内に入ってしまうと、もとから体内に


あったアミノ酸と区別することはできません。


しかし、重窒素をアミノ酸の窒素原子として挿入すれば、体内に入った


アミノ酸の行方を追跡できることになります。


さらに現在はシェーンハイマーの時代にはなかった、NMR(核磁気共鳴)


という技術がありますから、体に傷をつけずに非侵襲的に重窒素の行方を


追うことができるはずです。


今回はここまでにして、次回はシェーンハイマーが実際におこなった


実験の内容と、その結果について書きたいと思います。