結合組織内へのタンパク質蓄積を証明する方法(6)

 

今回は、重窒素とNMR(核磁気共鳴)を使って、体内のタンパク質の


行方を追う実験の、具体的な方法について考えてみたいと思います。


シェーンハイマーの実験でもわかるとおり体内では、あらゆる部分で


古くなった細胞、組織は破壊され、また新たに作り直されるという


作業が延々と繰り返されています。


ということは、何年かすると体を構成している全ての原子は一新されると


いうことになります。


しかし私の言っている蓄積タンパク質は、なんらかの方法で除去されない


かぎり、同じ場所に何年、何十年と溜まったままになっているはずです。


年配の方だと、骨膜の部分に石かと思うほど硬く凝縮したタンパク質が


沈着していることがよくありますが、あのレベルのものはかなりの年数が


経っているはずです。


また、体内では骨、筋肉、内臓、皮膚など各々の組織で細胞が入れ替わる


速度が違っています。


細胞、組織が入れ替わることをターンオーバーと言いますが、まずは


ウィキペディアからターンオーバーに関する説明を転載します。




ターンオーバー (生物)   (ウィキペディアより)


生物学におけるターンオーバー(metabolic turnover)もしくは代謝回転とは

生物を構成している細胞や組織 (生物学)が生体分子を合成し、一方で分解して

いくことで、新旧の分子が入れ替わりつつバランスを保つ動的平衡状態のこと。

また、その結果として古い細胞や組織自体が新しく入れ替わること。

生物種や細胞・組織の種類、分子種によって、ターンオーバー速度には大きな

差異がある。

通常、ターンオーバーは同位体を用いた代謝測定により測定される。

生体におけるターンオーバーを最初に明らかにしたのは、ルドルフ・シェーン

ハイマー(Rudolph Schoenheimer)である。

彼は1935年、窒素の安定同位体である重窒素(¹⁵N)用いて、肝臓における

ターンオーバーを観察した。

分子のターンオーバーは、さらに上位の細胞・組織のターンオーバーを

構成する現象であるが、mRNAのターンオーバーのように遺伝子発現に

深く関与することで生体内で特に重要な役割を果たしているものもある。

組織レベルのターンオーバーの例として、例えばヒトの表皮細胞は基底層で

形成され、約28日かけて角化し、角質細胞になり最後は垢として剥落する。

組織のターンオーバーに要する時間は、一般に個体の老化とともに増大する。




つまり


 1、各組織のターンオーバーが一巡する期間を調べる。

 
 2、重窒素を挿入した食物を一定期間、食べてもらう。


 3、NMR(核磁気共鳴)の手法により、体内の重窒素の場所を

   長期間にわたって、定期的にチェックする。



この手法により、もし重窒素が通常考えられている各細胞、組織の


ターンオーバーが一巡する期間よりも、長期間にわたって同じ組織内に


あれば、それは細胞、組織の構成要素としてそこにあるのではなく、


結合組織内に沈着したタンパク質として存在している、と考えても


よいのではないかと思います。


今回一番苦労したのは、この組織ごとのターンオーバーが一巡する期間を


調べることでした。


今回はここまでにして、続きは次回にします。