構造は機能を支配する。

 

オステオパシーとは、特定の治療テクニックを意味するのではなく


1つの哲学と言ってもよいものです。


ですから、その哲学に沿っていれば治療の際はスティルが言っている


ように、どのような方法を用いてもよいわけです。


現在、オステオパシーの治療をする際の4つの原則というものがアメリカ


オステオパシー協会(AOA)によって定められています。



4つの原則


1、The body is a unit. An integrated unit of mind, body, and spirit.

  身体は1つの単位である。一人の人間とは身体、心、および精神の

  単位である。


2、The body possesses self-regulatory mechanisms, having the inherent 

  capacity to defend, repair, and remodel itself.

  身体は自己調節、自己治癒、健康維持能力を持つ。


3、Structure and function are reciprocally inter-related.

  構造と機能は相互に関連し合っている。


4、Rational therapy is based on consideration of the first three 

  principles.

  合理的な治療は、上記3つの原理にもとづいている。



この4つが現在AOAで定められ、日本のオステオパシー教育においても


教えられている内容です。


しかし英文のサイトを見ると、これとは違う4つの原理を見かけることが


あります。



1、The unity of the being.

  人間は1つの単位である。


2、Structure governs the function.

  構造は機能を支配する。


3、The auto-regulation.

  自己調節機能。


4、The absolute role of the artery.

  動脈の役割の完全性。



私は、これが本来のもので現在の原則はこれを現代のオステオパスに


都合の良いように、変えてしまったものではないかと思っています。


これら2種類の原則と、スティルが書いた本の内容を比べると後から書いた


原則の方が、スティルの言葉に忠実なことがわかります。


特に構造と機能に関する部分。


現在、アメリカオステオパシー協会で定められている原則は


「構造と機能は相互に関連し合っている。」


ですが、スティルの著書を読むと彼の考え方は間違いなく


「構造は機能を支配する。」


という考え方です。


現在のオステオパシー治療では、骨の位置にずれがあっても、関節の


可動性があればよしとするものが一般的ですが、スティルの書いていることは


あくまでも「骨を正常な位置に戻しなさい。」ということです。


これは脊柱だけに限らず、人体を構成している206個の骨すべてに


当てはまります。


それぞれの骨には本来あるべき正しい位置があり、様々な原因でそこから


骨の位置が逸脱することにより動脈、静脈、リンパの流れ、あるいは


神経伝達がブロックされることが、病気の原因であると言っています。


そして、骨を正しい位置に戻せばそれらの機能は回復し、体は自らを


修復してくれる、とスティルは言います。


はっきり言って、これ以外の事は書いていないと考えてもよいくらいです。


では、なぜそれが「構造と機能は相互に関連し合っている。」という形に


変えられてしまったのでしょうか。


私の推測では、初期のオステオパス達はこれを忠実に行なっていましたが、


アメリカのオステオパスは投薬、手術などもおこなうことができるため


世代が変わるにつれて、だんだんと西洋医学的な考え方に傾いていき


「骨の位置を正す」という行為が出来なくなってしまったのだと思います。


(日本の場合、構造を正せないオステオパス達は西洋医学ではなく


スピリチュアル系に逃げるか、一般の人達には意味不明なオステオパシー


の内輪でしか通じないような言葉{例えば、タイド、リキッドライト、


自動力などなど}を使って患者を逆に混乱させるケースが多いようですが。)


そこで苦肉の策として、アメリカオステオパシー協会はオステオパシーに


とって一番大切な、原則自体を変えてしまったのではないでしょうか。


その結果オステオパシーは、本来ならほとんどの疾患に対応出来るはずが


現在のように腰痛、肩こりを治す程度のものになってしまったのだと私は


思います。


ちなみに、今でこそ日本でも「オステオパシー」とそのまま呼ぶように


なりましたが、以前は「整骨療法」と呼ばれていました。


案外この呼び方のほうが、オステオパシー本来の姿を正しく表現している


かもしれません。